もしかしてそれも「優しさ」だったのかってお話
毎日の散歩でたんぽぽを見つけては摘むか摘まないか念入りに観察するわたし
もちろんたんぽぽ探知犬のカリンもクンクンとぬかりない
先日、こんなことがあった
その日、カリンとわたしだけで散歩に行った
わたしの手の届かない高い所のそのまた奥に
スっと伸びたたんぽぽの綿毛を見つけた
そこは他所様の敷地で草ボーボー状態
入り口に車を停めている空き地
さすがにその土地に足を踏み入れるわけには行かずブロック塀に足をかけてチャレンジしたものの手も足も短くて全く届かなかった
綿毛は誇らしげに着々と旅の準備をしているようだった
まんまるでまだ飛ばずにスっと伸びたその姿が忘れられず
次の日、髭親父に「あの綿毛取ってー」とお願いした
わたしが綿毛をスプレーで固めると言った時、「かわいそう」と言っていた彼だが、わたしの綿毛愛を理解してくれたのか?
長い足でコンクリート塀をよじ登り
長い手で綿毛をムギュっと掴んだ
「コレやろ?」と言いながら一瞬で摘み取った
髭親父の手は立派な綿毛を掴んでいた
自信満々のその姿は、あの時「かわいそう」と言ったのが嘘のようだった
その自信満々の姿にわたしは少し不安になった
そこはわたしの待つ場所より高い
もしかして…綿毛を手に彼はそこから飛び降りるんじゃないか?
まさか…
「そぉっと持ってきてねー」
そう声をかける間もなく彼は飛んだ!
…
綿毛も飛んだ…
そうか…
彼は最初から飛ばすつもりで摘んだのだ
綿毛に旅を急がせるために自ら綿毛を摘み飛ばしたのだ
綿毛を摘むことも優しさだったのか…ってお話
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